■心に迫ってくる天皇皇后両陛下の歌会始のお歌
昨日1月15日に皇居・宮殿「松の間」では恒例の歌会始が行われた。今年のお題は「静」であったが、皇族方のお歌は式年遷宮や神社のことをお詠みになられているものが多かった。どの皇族方も祭祀に臨まれるご姿勢が真剣であられるとともに、御心を研ぎ澄まされておられることを実感した。
それにしても天皇皇后両陛下のお歌は心に迫ってくるものがあり、また昨年が一つの節目であることを感じることができるのではないか。
宮内庁と解説と小生の拙い感想を掲載した。
天皇陛下
慰霊碑の先に広がる水俣の海青くして静かなりけり
[宮内庁の解説]
天皇皇后両陛下は、昨年十月の全国豊かな海づくり大会御臨席のための熊本県行幸啓の際、海上歓迎行事御臨席及び御放流等のため水俣市を初めて御訪問になった。水俣市では、御到着後すぐに、水俣病慰霊の碑に御供花されたが、その折、慰霊碑の先に広がる水俣の海を御覧になり、お詠みになった御製。
※感 想
年頭の御製でも水俣のことをとり挙げておられ、ことの他、水俣病ら罹災された人々のいたつきに御心を砕かれておられる。慰霊碑の先に広がっている海がかつて公害病の温床となったわけであるが、その「悲しみの海」を見つめながら、亡くなられた人々へ限りない慰霊を捧げられておられる。
広がっている海の静けさに永遠な流れを感じるとともに、一日も早く罹患された人々が穏やかによくなられる願いが伝わるお歌であると思う。
皇后陛下
み遷(うつ)りの近き宮居に仕ふると瞳(ひとみ)静かに娘(こ)は言ひて発(た)つ
[宮内庁の解説]
黒田清子様は、神宮式年遷宮にあたり、臨時神宮祭主として、一昨年の拝命以来度々に神宮の諸祭事に御奉仕になった。この御歌は、御遷宮の間近い昨年九月、黒田様が、伊勢への御参向を前に、天皇皇后両陛下に御挨拶に訪れられた際のご様子をお詠みになったもの。
※感 想
まさに昨年の神宮遷宮をお詠みになられているのだが、それを黒田清子様がこれから遷御の儀に御参向されるご決意を皇后陛下にお伝えされる様子を取り挙げられて、ご表現されているのではないか。瞳が静かであればあるほど、瞳がら発せられる強いご決意が感じられ、その大任をしっかりと果たされようとする気持ちが伝わるとともに、娘の成長を温かく見守る陛下のまなざしを感じるお歌であると思う。