■米国とともに新しい経済圏をつくる気概を示したTPP参加表明
安倍首相が懸案となっていたTPP交渉への参加表明を正式にした。先の日米
首脳会談では、全ての品目について関税撤廃するわけではなく、「聖域」を守る
ことを前提としているという意味が共同声明に含まれることを文言として挿入す
ることができるとして、これまでの決められない政治を脱却したものであった。
確かに関税撤廃された場合には、農業分野で言えば安い、品質にも疑問符が付
く農産物が入ってくることは予想でき、農業団体からは一貫して反対の声が上
がっている。首相は、農業分野については当面、GDPでマイナスになること可
能性があることを決して否定はしなかったものの、それ以上に「攻めの農業」を
していくことが迫られていること、しかしそれ以上に日本を加えた12ヵ国の
GDPは約27兆ドル、全世界のGDPの4割を占めることとなり、この自由貿易
圏は今後、成長が見込まれ、成長戦略には欠かすことのできない協定であること
を説き、試算上ではわが国のGDPを3.2兆円押し上げるとした。
今後、わが国にとっての「聖域」をいかに協議の中で主張していくか交渉力が
問われることは間違いがない。
この問題については、正直なところ加盟してみなけれぱわからないのである
が、それよりも保守側にとっても見解が分かれているから、難しい。
その点で昨日の産経の主張では、傾聴に値する指摘がなされている。ポイント
は以下の通り。
即ち、中国をにらんだ戦略的な意味に目を向け、「同盟国である米国とともに
新しい経済圏を作る」と位置付けること、中国抜きの米国主導のTPPへの参加
はアジア太平洋地域の経済秩序を中国の覇権ではなく、日米豪などを中心とした
自由主義の枠組として共有することに他ならないことから語っていけば、わが国
が加わらないという選択肢はあり得ない。
首相は農業団体には、丁寧に説明し、納得してもらうという胆力を持ち合わせ
ていることを参加表明ではしっかりと示しているのではないかと思う。